図書館の『喫茶室』

週末、区の図書館に行ってきた。モチベーションは第1に自転車に乗ること、第2に併設の喫茶を覗いてみること。

自宅からの道のりは自転車ならたいした距離ではないけど、大通りの車道を走るのは新鮮で気持ちが良い。この時期でも少し汗をかきはじめた頃に目的地に到着。お昼どきだったので喫茶室に直行する。

時に『喫茶室』という言葉は20代の自分には馴染みなく、いくらか気取った風なものにさえ聞こえなくもない。『喫茶店』はまだ耳にも口にもするし、勿論『カフェ』は馴染み深いけど。たぶん無意識にル●アールが基準になっていて、ああいう「昭和レトロ」で整えられた清潔な内装、敢えて垢抜け切らないような給仕服やメニュー、柔らかいブラウン灯なんかが『喫茶室』の定義だと刷り込まれている節がある。『喫茶室』はあくまで小洒落たひとつのスタイルなのだと。

この図書館の喫茶は決してそうしたスタイルを踏襲しているわけではないけれど、躊躇なく『喫茶室』と呼べる。なぜなら第1に館内にある『部屋』だから。物理的、客観的に『室』。第2にあまりにも無造作にレトロだから。入口脇から覗くショーケースにはトーストやパフェのサンプル。狭い引手の入口。お婆さんがひとりで切り盛りしているらしい、広くもなく、暗くはないけれど明るすぎもしない店内。お洒落感とか、空気感とか、そういう作為的なものはまったくない。ああこれも『喫茶室』というのか、としっくりきた。自分の中の『喫茶室』の定義が広がった。

ダイスカットされたハニートーストのお皿とカップソーサーが黒い漆風の盆に載せられてやってきた。イタリアンローストがちょっと意外なくらい美味しくて嬉しかった。でもいちばんびっくりしたのは、図書館で貸出手続きをしてきた本は勿論、まだ借りてない本でも持ち込んで読んでいて良いらしいということ。私のあとに来たおばさまがそう言われていた。それちょっとすごくない?

 この図書館は自習室がない、けど、その代わりにこの喫茶室を使うのも無粋な感じがするので、純粋に本を読みに来たとき、純粋にひと休みするための空間かな。自習スペースがほしいときは最寄駅を挟んで反対方面の図書館、憩いたいときはこっちの図書館。…と、使い分けようと思ったけれど、そもそも出かけなくても集中したりゆっくりしたりしやすいようにカフェテーブルを買ったんだった…(でも家で作業しようとすると自転車の出番がなくなる)。あちらを立てればこちらが立たぬ。自転車もっと乗りたいなあ。