ある男

平野啓一郎新作の『ある男』。いま中ほど。『空白を満たしなさい』や『マチネの終わりに』から続く人生観を考える主題に加え、構成要素が多分に政治/社会的で、それが大分直截的で、またなかなかに挑発的(褒めてる)で、Twitterランドで感想を述べている皆さんは、その点についてはどう感じ取っているんだろうと思う。新作にタイムリーに手を出すくらいだから、政治的立場は近い人が多いのだろうか。なにせ『マチネの終わりに』は商業上は正直ポピュリズムに向かっている気がするから(意訳:映画は過去、現在の受容といったメッセージ性が削ぎ落とされ、単なるラブストーリーに帰着するのではないかという懸念)、そういう単純でわかりやすいものを好む層がこの作品の副次的な主義主張に辿り着いた時どう思うのだろう、と妄想交じりの心配。自分がSNSでネガティブな側面を見過ぎているのかもしれないけれど、この本のそうした要素が恣意的にピックアップされ、righterに誹謗中傷されることとかがないように祈っている…。

 

10.18追記

こうした作品を世に出す時点であらゆる立場からあらゆる主張(や主張とも呼べないような誹謗中傷など)をぶつけられることは想定の上ですよね。作者の覚悟に比べて私はなんて瑣末なことを勝手に心配していたんだろうな…。